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ニードルフェルトでリアルな動物を作っています。 彼らの紡ぎ出すそれぞれの物語を、どうぞ聞いてください。
第47夜 * きつねの煎餅店
2019年04月24日 (水) | 編集 |
ぽかぽかと、よく晴れた日だった。
とある小さなお稲荷さんの参道に、縁日でもないのに、ぽつんと一軒露店が出ていた。
藍地に白く、きつねの顔を染め抜いた暖簾。
今どき珍しく、丸坊主で紺がすりの小僧さんが、にこにこ立っていた。

近寄って見ると、きつねの他にも、様々な動物の顔。
キャラクターもの。
芸能人や各国首脳。

こういうお面は、よく露店で見かけるが、これは食べられるお煎餅なのだ。
何より私が驚いたのは、その描写のクオリティだった。
動物の毛並みの一本一本、人物の細かい皺まで、彫刻のような…
いやそれ以上の、生きているかのような仕上がりなのだ。

『こんな精巧な金型を作る職人さんがいるんだ…』

お煎餅のケースには、小さな貼り紙がしてあった。
「どんな顔でも、おひとつからオーダーメイド承ります」

ミーコ

どんな顔でも…
私は思わずスマホを取り出した。
私の欲しい顔はたった一つだ。 去年死んだミーコ。
今でもずっと待受にしている、大切な猫…

でも…金型を作ってもらうんだろうから、時間かかるんじゃ…それに高いよね…

私は、もしかしたら自分で思う以上に長いこと、貼り紙を食い入るように見ていたのかもしれない。
声に出して訊いてもいないのに、小僧さんが言った。
「…いいえ、すぐに作れます。お値段も、ここに並んでるのと、同じですよ。」

ほんの数百円で? ほんとうに?
私は待受を小僧さんに見せた。

「…はい。もう覚えました。」
小僧さんは、数秒間まじまじと画面を見ると、猛然と粉と卵を溶き始めた。

「午前中に、たくさん基本のきつねが売れちゃったんで、何枚か腕慣らしに焼きますね。その後ミーコちゃんにかかります。」
小僧さんはフライパンを火にかけると、タネを流し込んだ。
キツネの形してない、ただの丸いフライパンだ。

…私、ミーコの名前を、言ったっけ?

すぐに甘いにおいがたちこめ、キツネ色の丸い煎餅が焼けた。
小僧さんは、まだ柔らかいそれを、指でつまむと、
「あ、熱くないの?」という暇もなく、べちゃっと自分の顔に押し当てた。

「だ、大丈夫? やけど、してない?」
小僧さんは、ゆっくり、大事そうに煎餅を顔から剥がした。

キツネの小僧さん

中から現れたのは、ふさふさ、金色に見まがう輝く毛色の、子ギツネだった。

人生で、あれほど驚いたことってない。
なのに小僧さんは、淡々と、「僕はもう慣れてますから」と、立て続けに煎餅を焼いては顔に押し当てた。
みごとなきつね煎餅が、ずらりと並んだ。

「だんだん、調子出てきた!次は、ミーコちゃんやります」
そう言って、小僧さんが顔から煎餅を剥がすと…
まぎれもない、ミーコの顔が、現れた。

…どれほど私は、いつまでも、その顔を見ていたかったろう。
けれども小僧さんは、てきぱきと、煎餅をレトロな紙袋に入れてくれたり、吊り下げたザルからおつりを出したり。
別れの時が近づいていた。

「このお煎餅ね、しばらくは食べないで、眺めててくれてもいいけど…。
最後には、必ず食べてあげてくださいね。お煎餅はそれが幸せなんです。
約束ですよ。」

お見送り小僧さん

小僧さんはいつまでも手を振って、私の姿が見えなくなるまで見送ってくれた。
最後までミーコの顔のままだった。

     *          *          *

帰り道、ふところの中でお煎餅は、不思議にいつまでも温かかった。
ミーコを拾って、抱いて帰った日のようだった。

何日も、ミーコのお煎餅を眺める日が続いた後。
『あ、今日がきっとその日なんだ』と、何故だかふっと、そんな気がした。

お煎餅はほろほろと、ほんのり甘くて懐かしい、普通においしい味がした。

何の涙かわからない…悲しいだけとは、もう違っていた。
安堵なのか、あきらめなのか…
いやもっと大きくてふかふかの、暖かいものに大切にくるまれたような感覚。
涙は、ぬぐってもぬぐっても、とめどなく湧いて仕方なかった。



それにしても…
どうしてあの日、訳もなく、お稲荷さんのあるあの駅で、
降りてみようと思ったのかなあ。
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ヨーロッパアカギツネ
2019年04月22日 (月) | 編集 |
キツネのジョヌ、メインの全身像は、今年はこの子です。

ジョヌの友だちになれそうな年格好の、あどけなさを残した若狐。
大好きな人に、出会えますように。

キツネ展2019全身像

うふふっ

そして一千一猫物語、近日公開!
主人公はボクだよ~
こちらも見てね♪
キツネブローチ最後の一つ
2019年04月21日 (日) | 編集 |
キツネ展出品ブローチ、最後の一つは…
ギンギツネ!

いつもながら黒い顔の子は写真写り悪い…
実物はかっこいいんだけど、伝わりにくい~
作るの大変だし~

いつもつい愚痴が出てしまうのですが、手がかかる子ほど可愛い気もする。

キツネ展2019-7

(アカギツネ亜種)

ナツメヒロさんで本物を見てもらえたら幸せです。

明日は全身像をお披露目します。
そして、久々に(久々過ぎて誰も覚えていないかもしれないが、このブログは動物達の物語を夜な夜な綴るのが本来の目的なのです)一千一猫物語アップします。
乞うご期待~
キツネのジョヌ、出品ブローチ続き
2019年04月19日 (金) | 編集 |
引き続き、作品仕上がっているものからご紹介です。

キツネ展2019-5

ホッキョクギツネ ♪

キツネ展2019-3
 
ホンドギツネさんたち。

キツネ展2019-6

白狐(アカギツネの亜種)

ま、まだ続きは制作中…(汗)
近日中に全身像ご紹介します。
キツネが揃いました
2019年04月18日 (木) | 編集 |
もうすぐそこの、キツネのジョヌ。
まだ作品は鋭意制作中、できたものからご紹介していきますね。

キツネ展2019-1

フェネックさんたち。

キツネ展2019-2

キタキツネさんたち。

キツネ展2019-4

ヨーロッパアカギツネ。

残りはまた明日…
あなただけのキツネを見つけてくださいね。ジョヌのお店で。